土讃線の車窓から~紺碧の太平洋~
(前記事へ:とさでんと高知城)
土讃線は土佐国(高知県)と讃岐国(香川県)を結んでいる海あり山ありの景勝路線だ。
旅のスタートは路面電車との乗換ができる朝倉駅。
特急も止まる駅ではあるが、駅周辺はずいぶんのんびりとしている。
中学受験の時に覚えた記憶のある仁淀川を渡るとさらにローカル感が増す。
どこかなつかしい田舎の風景。梅と菜の花が線路脇を彩っている。
吾桑駅の先の急カーブを抜けると列車は海岸沿いに一気に躍り出た。
先ほどとがらっと景色が変わった。須崎は漁業で栄えている町。列車からはたくさんの漁船が係留してあるのが見える。
ほとんどの人が須崎駅で降りてしまい、車内はがらがら。JR四国の赤字の現実を目の当たりにした感じだ。結局車内には数人の旅行者とお遍路さんだけが残された。ただぼーっと窓の外を見る人、うとうとと眠る人、読書をする人…関東や関西の電車ではどこか皆忙しないが、ここでは各々が思い思いにゆったりと旅を楽しんでいる。
そしてこの先が土讃線1番の絶景区間。個人的には日本一レベルだと思う。
左手に大海原が現れるのだ。
太平洋がこんなにきれいだとは知らなかった。
波の満ち引きが見える。線路はそれほど海のすぐそばを通っている。
ゴミひとつ落ちていないきれいな砂浜である。
こんなのどかなところでいつか暮らしてみたいなぁ。
さて、ここから先は山岳地帯に入る。しばらく海ともさよならだ。
線路は四国山地の山塊奥深くへと吸い込まれてゆく。
トンネルが連続する区間。乗っている気動車は車体を震わせながら標高差230mを一気に登ってゆく。
本当に車内はまばらにしか人が座っていない。こんな絶景路線なのだからもっと観光客を呼び込めないかとは思うのだが、青春18切符の格安旅行者が言う台詞ではないな。
四国が好きだからまた来ます。
終点窪川駅に到着。ここから宇和島方面へ向かう列車は1時間30分後。窪川はあまり見所がなさそうだったので、土佐くろしお鉄道で1駅先の若井駅に先回りする。若井駅は無人駅で、それこそ何にもない集落だが、地図で見ると四万十川沿いだったので散歩しても楽しいだろうと。実際この判断は正解だった。
ずいぶん久しぶりに出札補充券をもらう。切符の代わりになる紙だ。
四万十川沿いは土地が少し開けており、とてもきれいな農村地帯だ。
さて、若井駅で下車。予想はしていたが、降りたのは自分だけ。
列車が行ってしまうと、あたりは静寂に包まれる。自分は今、ぽつんと一人だけ田舎の小駅に残されたのだ。
さて宇和島行きの列車が来るまであたりを散策しよう。まずは名物沈下橋を見るため四万十川まで行こうと歩き出したのだが、それはまた次回の話で。
つづき:土佐くろしお鉄道若井駅