今日も京都の隅っこから

京都の隅っこの大学生

4月なのに雪!京都バス狭隘路線 広河原行き乗車

4月に入りうららかな天気が続いている。京都では鴨川縁の桜が満開で、ぽかぽか陽気の下、人々はコートを脱ぎ、花見なんかして楽しんでいる。


そんな彼らを尻目に、厚いダウンを着込んで叡電出町柳駅でバスを待っている自分がいた。別に寒がりだというわけではない。本当に寒いところに行くのである。


京都市の範囲は想像以上にとっても広い。これから行く京都市左京区の広河原はほぼ福井県境。ここまで京都バスが出町柳から1日3往復しており、通年運行の路線としては京都バス最長距離だ。所要時間は2時間である。



この路線の最大の見所はバスマニアの間で名高い花背峠。かわいらしい名前とは裏腹に、この峠は運転手泣かせの「悪路」。ヘアピンカーブが連続するうえ道幅が狭く1台車が通るのがやっとなのだ。


10時前に出町柳駅に行くと数人の乗客が並んでいた。みんな広河原まで行くとは思えないから途中で降りるのだろう。


バスに乗り込み出発を待っていると、運転手がバス会社の職員と話している。

職員 「16時に戻ってきたとき営業所まで乗せてーな」
運転手「生きて帰ってきたらな」

いやいや、全然冗談に聞こえないんだけど…


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やはりほとんどの乗客は鞍馬までの間で降りてしまった。バスの中に残ったのは途中のお寺に法要に行くご一行と自分のみ。


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鞍馬から先、バスはどんどん山奥へと入ってゆく。乗り降り自由区間に入るとグリーンスリーブスが鳴りだした。バスが接近しているのを近くの車に伝えるためである。


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峠に入ると積雪がちょっとある。峠の先の住民にとってトンネル開通は悲願らしい。


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噂に聞いた伝説のヘアピンカーブが始まった。


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道が狭すぎるので車の離合には一苦労する。ちなみにバス同士は無線でお互いの位置を確認しあって、変なところですれ違うことのないように調整していた。


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遠足に行く小学生の臨時団体バスに追いついてしまったらしい。


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「4月の京都市だよ」と言ってこの写真を見せたところで一体誰が信じてくれるだろうか。このあたりが峠の最高地点だ。雪もだいぶ深くなった。


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峠を抜けたら花背という集落に入る。雪は積もっていないようだ。


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しかし山の奥へ奥へと進むに従ってまた雪景色になった。気温は3度である。


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法要のご一行が途中で降りてしまったので一人だけ車内に残される。


運転手「どちらまで行かれます?」
自分 「終点まで」
運転手「終点まで行っても何もないですよ」
自分 「いやぁー、1度この路線乗りたかったので」
運転手「あーそうですか」


自然と運転手と話が弾む。とても感じが良く親切な方で、ここら辺りの集落に関するいろいろな話を教えてくださった。


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終点に到着。いすゞ+富士重ですね。京都バスの中でも相当古い部類です。


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帰りの発車は2時間後。「ここは何もないから、来た道をたどっていってバスに追いつかれたところで乗せてあげる」と運転手。帰りはアニーローリーの歌が流れるそうなので、それが聞こえたら手を挙げれば良いとのこと。はい、そうします。


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歩き出す前に広河原の唯一の名所である広河原スキー場を見る。京都市唯一のスキー場だ。シーズンは終わっているため人気はない。あの悪路を通ってまで来る人がいるのか大変疑問だが、一応存続しているところをみるとそれなりに需要はあるみたい。


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麓は桜が満開だが、ここではまだ梅のかぐわしい香りが漂っている。


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広河原では毎年夏になると「松あげ」という奇祭が行われる。火のついた松明で玉入れをするのだ。その籠を支える支柱が寝かされていた。


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廃校になった小学校を発見。


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二宮尊徳が寂しそうにたたずんでいた。


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立派な茅葺きの民家がたくさんある。京都の美山は茅葺き集落として有名だが、あそこと違ってここは全く観光地ではないので風情はこっちの方がある。


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昔話の世界に来たかのようだ。京都市内から2時間でこんな所に来れるとは…。あ、そういえばここも京都市だった(笑)


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集落を結ぶようにして流れる川は桂川。とんでもなく澄み切った清流でびっくり。下流の山崎辺りで悪臭を放っているあのドブ川と同じ川だとは到底思えない。


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試しに手を入れてみたが思ったより冷たくない。本当に飲めそうだ。


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またまた廃校になった小学校があった。明治9年開校の歴史ある学校だったらしい。それよりここの立派な苔を京都の神社仏閣に売りつけたら儲かるだろうなぁ


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四万十川よりも透き通っていてきれいな桂川。夏に泳ぎに来たい。


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いやー、きれいすぎだ。どうしてみんな京都の北の方をぜんぜん知らないんだろう。


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なんだかんだ2時間30分で山道を10キロも歩いて花背の集落まで来てしまった。ここより先はヘアピンカーブの花背峠。これ以上行くと運転手も車を止めずらいだろうと思ってバスをここで待つことにする。しかし本当にここも政令指定都市なの?


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遠くからアニーローリーの音が聞こえてきた。バスが来るのだ。このド田舎で聞くと西洋音楽もどこかお囃子のように聞こえるのだが気のせいだろうか。


運転手に「こんな遠くまで歩いたんか、すごいなぁ」と感心された。足には自信があるつもりだが、もうガタガタだ。


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町まで戻ってきた。まだ春の来ていない山の中とは全く別世界である。しかし京都も広いなぁと再認識。今度は夏に行ってみようかな。涼しそうだし。